揺蕩う
本当の気持ちには誰も近づけないし、触れられない。
どうしても他人に会うと見栄を張ってしまう。予防線を張って、保険をかけて、時には嘘をついてしまう。
分かったような顔をされると、似た者同士だねと笑う。その時は本当に相手のことを似た者なのかもしれないと思うこともある。
家に帰って1人になると、そんなまやかしで騙すことはできなくなってしまう。弱さとコンプレックスに塗れた、醜い自分が天井を見つめながら部屋で横たわっている。体からまったくエネルギーが湧いてこない。
弱い自分を俯瞰して受け入れて諦めているつもりが、心の奥底に残った微かなプライドが理想を追い求めている。他の人と違うなんて気持ちはとうの昔に捨ててきたはずだ。でも、全く動かないくせに、奥の奥の心がこんなんじゃダメだなんとかしなきゃいけない、と表舞台に出てこれず藻掻いている。
生きている価値はないけれど、死ぬ価値もない。死にたいと呟いて、なんとなくそれに浸ってのうのうと生きてる奴なんてごまんといる。本当は死にたいんじゃなくて、満足した生き方が出来ていない自分を受け入れられないだけなんだ。
俺が浅はかだと馬鹿にしてるあいつは、努力してそいつなりの成功を掴もうとしている。あいつを浅はかだと馬鹿にしている俺は、全てを投げ打って破滅に向かう覚悟なんてないくせに、理論ばかり並べて逃げまくり、覚悟できないまま破滅に向かっている。
昔から常々、幸せな時間以外不幸だと思ってきた。今の自分は不幸だと感じる資格すらない。生きている実感なく、気付いたら何者かの手によって日常が食い潰されていて、ゆらゆらと俺のような誰かが漂っている。
もうすぐ23歳になる。